【星野リゾート代表・星野佳路氏】記者会見に対する発言に賛否の理由

時事

星野リゾート代表の星野佳路氏が、2024年9月25日に大阪で開かれた記者会見で、観光業界に対する円高の影響や持続可能な観光市場の重要性について語りました。この発言が注目される理由は、彼が観光業界の短期的な成長に警鐘を鳴らし、長期的なビジョンを持った観光業戦略の必要性を提唱した点にあります。それにも関わらず、ネガティブなコメントが見受けられるのは何故でしょうか。

星野氏の発言内容とは

星野氏は、記者会見で現在の観光業界が急成長している背景に、円安が大きな影響を与えていることを指摘しました。2024年8月には訪日外国人観光客が約293万人に達し、7か月連続で過去最高を記録しています。しかし、星野氏はこの成長を「需要の先取り」と表現し、円安がもたらす一時的な効果に依存せず、リピーターを増やすことが持続可能な観光市場を形成するために重要であると述べています。

彼は、スイスのツェルマットで成功している「ロイヤルゲスト」制度を例に挙げ、20年間に20回訪れた観光客を特別にもてなすといった長期的なリピーター戦略を推奨しました。

星野氏の発言に対する批判

円高批判に対する誤解

ネット上には「星野氏が観光業界の都合で円高批判をしている」というコメントが複数見受けられます。

しかし、これは彼の主張を誤解しているものです。星野氏の意図は、短期的な利益に依存せず、為替変動に左右されない持続可能な観光市場を形成することにあります。

彼は、円安に依存する形で観光客を呼び込む現在の状況が一時的なものであるとし、長期的にリピーターを増やす戦略が重要だと説いています。つまり、彼の発言は観光業界の短期的な都合に基づいたものではなく、日本の観光業の将来的な安定と成長を考慮したものです。

一部の報道の見出しが星野氏の発言を一面的に捉え、この誤解を誘導している可能性もあります。しかし、「円高になったら訪日しないという人は、そもそもリピーターにはならないだろう」との見解も存在し、為替に関する言及が波紋を呼ぶのも無理はないかもしれません。

「二重価格」への慎重な姿勢

また、星野氏は観光業界で議論されている「二重価格制度」に対しても、慎重な姿勢を示しました。現在、オーバーツーリズム(観光公害)への対策として、訪日客と日本人向けの価格を分ける二重価格が注目されています。

しかし、星野氏は「全体的に価格を高くして需要を調整するべきだ」とし、訪日客だけに高い料金を課すことは日本の「おもてなし」の精神に反する可能性があると述べています。

この見解に対しては、一部の意見として「高級志向の星野リゾートだからこそ発言できる」との声が挙がっています。星野リゾートのような高価格帯の宿泊施設においては、価格の引き上げによってサービスの質を維持しつつリピーターを確保する戦略が実現可能です。

しかし、観光客の需要減少を懸念する中小規模の宿泊業者や観光施設にとっては、この発言は受け入れがたいものとなっています。特に、こうした事業者は訪日客に依存する割合が高く、価格の上昇が市場全体に与える影響に対して慎重な姿勢を示しています。

星野氏の発言を支持する声

持続可能な観光市場を目指す長期的視点

一方で、星野氏の発言に賛同する声も多くあります。特に、彼が指摘した持続可能な観光市場の形成に向けたリピーター戦略は、観光業の長期的な発展を見据えたものとして評価されています。短期的な円安依存の観光客増加は、一時的なものに過ぎず、これに依存し続けることはリスクが大きいとの意見も少なくありません。

経済界における支持の声

また、円安が国の経済に与えるプラスの影響が大きいとの見解から、日銀の早急な利上げを阻止する動きは経済界として取るべきだとの意見も、星野氏を支持する人々の中に存在します。

彼らは、円安が観光業の回復や国内産業の競争力強化に寄与することを考慮し、適切な経済政策の維持を求めています。このように、星野氏の発言は単なる観光業の視点だけでなく、広範な経済の視点からも支持される要素があるのです。

観光業を盛り上げる姿勢への評価

星野氏の観光業を盛り上げる姿勢は、彼の新しい取り組みを通じて明確に表れています。特に注目すべきは、大阪・りんくうタウン駅近くに11月オープンするホテル『OMO関西空港 by 星野リゾート』のクラフトビアバー『よなよなムーンウォーク』の開設です。

このバーでは、大阪湾に沈む夕日を眺めながら、軽井沢のクラフトビールメーカーが製造した「よなよなエール」を含む6種類のクラフトビールを楽しむことができ、スペアリブやチーズケーキとのペアリングも可能です。これにより、訪れる観光客に新しい食体験を提供し、地域の魅力をさらに引き出すことが期待されています。

また、星野リゾートが手掛ける大阪のホテルは、大阪・関西万博のプロモーションにも協力し、万博に訪れる外国人観光客に大阪のさらなる魅力を伝える役割を果たすとしています。これにより、地域全体の観光業が活性化することが期待されており、星野氏の戦略が観光業界全体に与える影響の大きさを示しています。

さらに、星野リゾートが旧奈良監獄を活用した高級宿泊施設の開業を発表したことも重要な動きです。令和8年春に開業予定の「星のや奈良監獄」は、日本初の監獄を生かした宿泊施設として、奈良観光の課題である宿泊客の少なさを解消する一助となることが期待されています。この取り組みは、重要文化財である旧奈良監獄の歴史や意匠性を尊重しながら、富裕層をターゲットにした高級ホテルへと生まれ変わることが求められます。

これらの施策からも明らかなように、星野氏の観光業を盛り上げるための取り組みは、地域経済への貢献だけでなく、観光体験の質を向上させることにもつながっています。彼のビジョンと行動力は、観光業界に新たな風を吹き込んでおり、今後の展開に大いに期待が寄せられます。

【まとめ】

星野佳路氏の発言は、短期的な円安効果に依存しない持続可能な観光業を目指すという観点で賛否を呼んでいます。リピーターを増やす戦略や二重価格への慎重な姿勢は、長期的な観光業の発展を目指すものとして支持されていますが、一部からは現状の観光業界に対する批判と捉えられることもあります。今後の日本の観光業は、星野氏の提案を参考に、持続可能な成長を目指す必要があるでしょう。